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2015 년 7 월 4 일 빅 사이트 11:00~ 마이나비 국제취업박람회장 도착 학생접수 구역에서 입장관련 서류를 작성하고 이 과계열이면 노란색, 문과계열이면 빨간색 명찰을 착용한다. 일본의 기본적인 면접복장은 우리나라 와 달랐다. 남성복장에서는 그 차이를 느끼지 못

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台 東 구에서 거주하는 외국인 여러분께 타 이 토 본 책자에는 台 東 구에서 거주하는 외국인 여러분과 관련이 깊은 구청의 업무나 시설 등이 게재되어 있습니다. 본 책자를 곁에 두고 활용해 주십시오. 台 東 区 で 暮 らす 外 国 人 の 皆 様 へ 本 冊 子 は 台 東

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일본어걸음마 3 단계 : 악센트 영어는특정음절을강하게발음하는강약악센트인데비해, 일본어는각음절이상대적으로높거나낮아지는고저악센트를갖는다. 악센트가높은데서낮게떨어지는부분을 핵 이라고한다. 2week 6 과 1 핵 이없는것 わた \\ し [wa ta shi] かば \\ ん [

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5 藥 師 如 來 立 像 神 護 寺 8 日 月 山 水 圖 右 隻 金 剛 寺 6 傳 藥 師 如 來 立 像 唐 招 提 寺 7 如 來 形 立 像 唐 招 提 寺 U 衣 文 8 寫 實 群 7 傳 U 遊 び 袈 裟 波 形 15 18 Albrecht Altdorfer 1480 1538 St George and the Dragon 朱 端 16 寒 江 獨 釣 圖 15 16 日 月 山 水 圖 8 238 : 239

9 紅 白 梅 圖 MOA 金 地 銀 泥 切 箔 料 紙 下 紙 尾 形 光 琳 1658 1716 紅 白 梅 圖 9 10 枕 屛 風 11 Fulfillment 枕 屛 風 17 枕 繪 本 3 10 老 成 艶 麗 見 立 て 津 輕 4 Gustav Klimt 1862 1918 11 5 19 3 枕 屛 風 1699 寬 文 9 菱 川 師 宣 1694 逸 名 枕 繪 本 稀 覯 本 10 林 美 一 艶 本 硏 究 師 宣 東 京 : 有 光 書 房 1968 p 88 4 河 野 元 昭 琳 派 響 きあう 美 京 都 : 思 文 閣 出 版 2015 pp 429 430 初 出 光 琳 と 津 輕 家 國 華 1251 2000 5 馬 渕 明 子 ジャポニスム 東 京 : ブリュッケ 1997 7 240 : 241

19 宮 川 香 山 1842 1916 12 20 佐 伯 祐 三 1898 1928 13 Ⅱ. 화면의 틀에 대한 의식 19 Japonism 浮 世 繪 歌 川 廣 重 1797 1858 名 所 江 戶 百 景 羽 田 の 渡 し はねたのわたし 辯 天 の 社 Henri de Toulouse Lautrec 1864 1901 Janne Avril au Jardin de Paris 12 鳩 櫻 花 圖 高 浮 彫 花 甁 13 ガス 灯 と 廣 告 14 信 貴 山 緣 起 繪 卷 飛 倉 の 卷 朝 護 孫 子 寺 12 繪 卷 信 貴 山 緣 起 3 命 蓮 1 飛 倉 の 卷 鉢 校 倉 說 話 畫 畫 卷 14 242 : 243

北 宋 枇 杷 猿 戱 圖 15 明 代 15 畫 僧 雪 舟 1420 1506 四 季 花 鳥 圖 狩 野 派 襖 1 淸 明 上 下 圖 唐 宋 13 秋 冬 山 水 圖 16 秋 幅 右 幅 冬 幅 左 幅 南 宋 戶 田 禎 佑 17 俵 屋 宗 達 15 枇 杷 猿 戱 圖 國 立 故 宮 博 物 院 16 秋 冬 山 水 圖 金 地 院 6 二 曲 屛 風 一 雙 風 神 雷 神 圖 17 右 隻 風 神 左 隻 雷 神 裳 大 鼓 6 戸 田 禎 佑 日 本 美 術 の 見 方 東 京 : 角 川 書 店 1997 pp 191 194 244 : 245

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Ⅲ. 결론 伊 藤 若 沖 1716 1800 19 20 19 雪 中 鴛 鴦 圖 動 植 綵 繪 宮 內 廳 三 の 丸 尙 藏 館 20 雪 中 錦 鷄 圖 動 植 綵 繪 宮 內 廳 枠 組 み framework 9 臺 灣 大 學 若 松 由 理 香 Phillip Bloom 44 20 주제어 keywords 옮김 일본 미술의 특질 Characteristics of Japanese Art, 具 象 적인 것과 抽 象 적인 것의 공존 Coexistence of the representational and the abstract in one continuous space, 화면의 틀로 대상을 잘라 내는 효과 Effect of cropping an object with the pictorial frame, 藥 師 如 來 立 像 ( 神 護 寺 ) Standing Yakushi Nyorai (Jingoji), 信 貴 山 緣 起 Miraculous Origin of Mt. Shigi 투고일 2015년 8월 10일 심사일 2015년 8월 24일 게재확정일 2015년 9월 7일 附 記 Absence of Boundaries Presence of Frames: Two or Three Things I Know About Japanese Art 紀 要 美 術 史 論 叢 31 2015 100 177 2014 6 10 École Internationale de Printemps 40 三 浦 篤 Jean Luc Godard Deu or trois choses que je sais d elle 248 : 249

境 界 の 不 在 枠 の 存 在 日 本 美 術 について 私 が 知 っている 二 三 の 事 柄 佐 藤 康 宏 日 本 美 術 の 特 質 を 論 じるのは 研 究 者 にとってひとつの 罠 だといえる この 罠 は 日 本 美 術 を 単 純 化 して 見 せようとする これが 日 本 美 術 の 特 徴 です といいながら 学 者 が 何 か を 差 し 出 すとき 彼 女 ないし 彼 は 必 ずほかのだいじなものを 投 げ 捨 てているのだ 私 もこの 罠 から 逃 れられないことを 自 覚 しながら せめて 撞 着 語 法 oxymoron で 語 ろう つまり 最 初 に 日 本 美 術 には 境 界 がないといい 次 に 日 本 美 術 には 枠 があるというのである まず 境 界 がないという 話 から 始 める 一 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものとの 共 存 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものとが ひとつの 空 間 に 共 存 するところに 日 本 美 術 の 魅 力 が 宿 る 場 合 が 多 い と 私 は 思 っている ヨーロッパや 中 国 の 美 術 は 非 常 に 早 い 段 階 でみご とな 自 然 主 義 の 造 形 に 到 達 した たとえば 紀 元 前 世 紀 のギリシャ 彫 刻 に 基 づいて 造 られ た 世 紀 のコピー 円 盤 投 げ 大 英 博 物 館 や 紀 元 前 世 紀 に 秦 の 始 皇 帝 の 墓 に 置 かれ た 武 将 俑 秦 始 皇 兵 馬 俑 博 物 館 のように 日 本 の 美 術 は 自 力 で 同 じようなレヴェルの 自 然 主 義 を 達 成 することはなかった 最 初 に 中 国 だいぶ 遅 れてヨーロッパの 影 響 を 受 けて 自 然 を 再 現 する 技 術 を 発 達 させたが こ の 生 徒 は 偉 大 な 先 生 たちのような 徹 底 したリアリズムを 身 につけようとはせず いつも 何 か 違 うことをしていたように 思 える たとえば 紀 元 前 3000 2000 年 ころの 山 形 県 西 の 前 遺 跡 出 土 の 土 偶 図 1は 弓 形 にまとめられた 髪 三 角 形 の 肩 と 胸 太 い 四 角 い 柱 のような 脚 とい うぐあいに 曲 線 と 直 線 を 巧 みに 結 びつけて 人 体 を 力 強 いフォルムに 仕 立 てている ジャコ メッティなど20 世 紀 の 彫 刻 家 に 見 せて 感 想 を 聞 きたかったような 代 物 である こういう 抽 象 的 原 文 な 形 態 への 好 みを この 生 徒 日 本 美 術 は 抱 え 続 けた ヨーロッパや 中 国 のような 文 明 の 造 形 においては 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものとは はっきりと 区 別 される そして 具 象 的 なイメージこそが 中 心 となり 抽 象 的 な 文 様 のような ものは 周 縁 の 装 飾 となる 傾 向 がある 大 英 博 物 館 のアンフォラ 図 2を 例 に 挙 げよう 紀 元 前 510 500 年 ころのものとされる 胴 の 部 分 にミノタウロスを 退 治 するテセウスを 描 いている そして 物 語 の 場 面 を 区 画 する 記 号 として その 両 側 に 植 物 文 様 が 描 かれる 頸 の 部 分 や 底 の 部 分 も 文 様 で 飾 られている このように 具 象 的 な 描 写 で 描 かれた 物 語 絵 が 中 心 であり 重 要 であり それに 対 して 抽 象 的 な 文 様 は 周 縁 的 な 場 所 に 用 いられる という 階 層 化 が 認 め られるのである 日 本 の 土 器 の 意 匠 にはそういう 階 層 化 がないことを 見 てみよう 図 3 紀 元 前 3000 2000 年 ころの 深 鉢 である そこでは 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものとの 間 に 境 界 がない 蛇 は 強 い 生 命 力 や 豊 穣 を 象 徴 する 動 物 と 考 えられたようで 世 界 中 の 古 代 美 術 で 造 形 されて いる 縄 文 土 器 の 装 飾 にもよく 用 いられたモチーフだった この 深 鉢 では 蛇 の 意 匠 によっ て 口 縁 と 胴 とがつながっている 口 縁 には 大 きな4つの 把 手 がつき 把 手 は 向 かい 合 う 位 置 で 同 じ 形 になるように 対 称 的 に 作 られている そのうちの 組 は 頂 点 に 鎌 首 をもたげた 蛇 の 頭 を 乗 せている その 蛇 の 体 は 土 器 の 肩 のところで1 回 とぐろを 巻 く さらに 土 器 の 下 半 分 でもう 度 とぐろを 巻 くのだが そちらでは 蛇 の 胴 体 が 幾 何 学 的 な 渦 巻 文 を 作 る つまりこの 深 鉢 で は 蛇 が 口 縁 と 胴 というふたつの 部 分 に 現 れる 口 縁 では 自 然 な 蛇 の 姿 で そして 胴 の 部 分 では 渦 巻 文 様 として そうやって 具 象 と 抽 象 というふたつの 領 域 を 横 断 する 蛇 の 姿 が この 土 器 の 全 体 を 統 一 し 土 器 に 魔 術 的 な 力 を 加 えている 仏 像 においても 具 象 と 抽 象 が 共 存 しているさまをふたつの 例 で 示 す ひとつ 目 は 金 銅 仏 の 阿 弥 陀 三 尊 像 とそれを 納 める 厨 子 で 8 世 紀 初 めのものである 図 4 1 阿 弥 陀 三 尊 像 は 蓮 の 池 に 咲 く3 本 の 蓮 華 の 上 に 現 われた 姿 である 阿 弥 陀 如 来 像 の 頬 は 丸 く 張 り 薄 い 衣 が 肉 体 をぴったりと 覆 っている 感 じが 表 現 されている 初 唐 の 様 式 を 取 り 入 れた 人 間 に 近 い 造 形 がされているのである ところが 蓮 池 から 生 える 蓮 華 の 茎 はうねりながら 垂 直 に 伸 びていて その 形 は 奇 妙 に 固 まった 螺 旋 形 だ 何 だかスペインのバロック 建 築 の 柱 を 連 想 させる さらに 蓮 池 にさざ 波 が 立 ち そこに 蓮 が 浮 かんでいる 様 子 は 半 ば 文 様 的 なデザ インで 表 されている 厨 子 の 台 座 部 分 には この 世 で 亡 くなった 人 が 阿 弥 陀 浄 土 の 蓮 華 の 中 に 生 まれ 変 わったありさまと 山 の 中 で 修 行 をする 僧 侶 が 描 かれている こうしてこの 厨 子 は 仏 像 とそれに 付 随 する 工 芸 品 そして 絵 画 立 体 と 平 面 の 造 形 を 活 用 して 全 体 で 阿 弥 陀 1 伝 橘 夫 人 念 持 仏 厨 子 については MUSEUM 565 号 2000 年 の3 篇 の 論 考 を 見 よ 250 : 251

のいる 浄 土 とそこに 連 続 している 人 間 の 世 界 とを 表 現 しているわけである その 表 現 には 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものが 混 交 している 神 護 寺 の 本 尊 薬 師 如 来 立 像 図 5は 非 常 に 魅 力 的 な 彫 刻 だが その 魅 力 も 具 象 と 抽 象 の 共 存 にある 2 像 の 部 分 を 見 るならば 人 間 らしい 肉 体 の 現 実 感 は 確 かに 再 現 されてい る 眼 窩 のくぼみも 細 く 見 開 かれた 眼 球 の 盛 り 上 がりも がっしりした 鼻 の 形 も 厳 しく 結 ばれた 口 元 も きわめて 巧 みな 鑿 さばきによって 形 作 られている 頬 のふくらみも 大 腿 部 のは ちきれるような 充 実 感 も 曲 面 が 的 確 に 示 している しかし それなりにリアルに 彫 出 された 顔 貌 は 非 人 間 的 な 要 素 強 調 された 仏 の 相 と 隣 り 合 うことで 互 いの 異 質 さを 際 立 たせてい る 仏 の 相 とは 通 例 よりもかなり 大 きく 隆 起 するように 作 られた 頭 のてっぺんの 盛 り 上 がり と 大 ぶりの 螺 (ら) 髪 (ほつ)である 唐 招 提 寺 旧 講 堂 の 伝 薬 師 如 来 立 像 図 6と 比 較 しよう 旧 講 堂 の 木 彫 像 は 鑑 真 がも たらした 新 様 式 を 示 すもので 日 本 の 木 彫 像 の 発 達 に 大 きな 影 響 を 与 えた 神 護 寺 像 もま たその 影 響 圏 内 にあるのは 明 瞭 である しかし 多 くの 類 似 点 を 持 ちながらも 神 護 寺 の 像 は 唐 招 提 寺 の 像 とは 決 定 的 に 異 なる 造 形 に 達 している たとえば 股 間 に 繰 り 返 されるアル ファベットの の 字 の 形 をした 衣 文 は 唐 招 提 寺 の 像 などに 近 い 表 現 が 見 られるものだ 唐 招 提 寺 像 の 衣 文 は もともと 中 国 の8 世 紀 半 ばの 仏 像 で 用 いられた 型 に 由 来 する 衣 がその 重 みで 垂 れ 下 がっているのを 写 した 写 実 の 痕 跡 をとどめているといえる それに 対 して 神 護 寺 像 の 衣 文 はずっと 抽 象 的 な 形 の 繰 り 返 しとして 整 えられている 縦 方 向 に 刻 まれた 衣 文 にも 注 目 しよう 唐 招 提 寺 の 像 の 衣 文 は 衣 が 両 脚 に 沿 って 肉 体 に 密 着 しながら 生 じる 皺 を 表 しているが それに 較 べて 神 護 寺 像 の 衣 文 は もはやそのような 自 然 らしさ 合 理 性 を 払 拭 している 今 度 はやはり 唐 招 提 寺 旧 講 堂 の 木 彫 群 のうち 如 来 形 立 像 図 7と 比 較 してみる 神 護 寺 の 縦 方 向 に 走 る 衣 文 の 形 は ここに 認 められるが こちらではその 衣 文 がかろうじて 太 腿 のヴォリュームの 表 現 と 一 体 になっている 腰 から 膝 と 足 首 の 半 ばに 至 るまで 一 息 に 続 く 神 護 寺 像 の 衣 文 線 は 衣 の 襞 を 描 写 する 役 割 を 離 れて 線 そのもの 形 そのものの 勢 いを 全 面 に 押 し 出 してくる 神 護 寺 の 像 は この 如 来 像 のタイプの 衣 文 と 先 ほどの 伝 薬 師 如 来 立 像 の 字 形 の 衣 文 とを それぞれの 機 能 を 無 視 してつなぎ 合 わせた 感 がある 唐 招 提 寺 の 木 彫 像 は 木 材 によってヴォリュームを 再 現 しようとしており 衣 文 もそういう 意 図 に 貢 献 してい るのと 違 って 神 護 寺 像 では 量 感 の 表 現 は 量 感 の 表 現 衣 文 の 形 は 衣 文 の 形 というふうに 機 能 が 分 離 している そして 抽 象 化 された 衣 文 が 形 それ 自 体 の 生 命 力 を 見 る 者 に 突 きつけ てくるのである ところが そのように 形 の 遊 びとしての 抽 象 的 な 美 しさを 持 つと 見 える 前 面 の 衣 文 の 中 で 胸 の 袈 裟 の 折 り 返 しの 部 分 だけがほかの 衣 文 と 違 って 不 規 則 な 波 形 を 示 す ほかの 衣 文 線 の 規 則 正 しい 曲 線 とは 異 なる 形 態 で 表 されるこういう 処 置 は 唐 招 提 寺 像 の 袈 裟 には 施 されていない 神 護 寺 像 ではこの 折 り 返 しの 部 分 だけがほかの 衣 文 線 から 浮 き 上 がって 妙 に リアルな 印 象 を 与 える また 衣 の 裾 の 部 分 も 不 規 則 な 形 を 描 いてめくれ 上 がり 平 坦 に 処 理 された 裾 の 先 だけが 何 かの 動 きを 示 すようである ある 部 分 には 現 実 的 と 見 える 造 形 がこらされ それと 隣 り 合 う 部 分 はその 現 実 感 を 無 効 にするかのような 抽 象 的 な 造 形 で 表 される 互 いに 反 発 するような 複 数 の 要 素 を 併 存 させ ているありさまが この 像 の 全 体 に 一 貫 しているのである 次 に15 世 紀 から18 世 紀 の 絵 画 の 例 を 数 点 挙 げよう ヨーロッパと 中 国 の 絵 画 では ひと つの 画 面 の 主 要 部 分 は 一 種 類 の 具 象 的 なモードで 描 かれている どんな 例 を 挙 げてもよい が たとえばアルブレヒト アルトドルファー 1480 頃 1538 聖 ゲオルギウス アルテピ ナコテーク や 朱 端 16 世 紀 前 半 寒 江 独 釣 図 東 京 国 立 博 物 館 を 思 い 浮 かべていただ きたい どのように 具 象 的 であるかというレヴェルはさまざまに 異 なるが そのモードと 決 定 的 に 異 なる 抽 象 的 な 造 形 を 画 面 空 間 に 招 き 入 れようとはしない 日 本 の 絵 画 は ひとつの 画 面 空 間 の 中 に 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものを 共 存 させ る 15 世 紀 後 半 か16 世 紀 前 半 の 日 月 山 水 図 図 8では 山 の 形 は 大 胆 に 単 純 化 されている 現 実 の 山 というよりも 山 はこんな 形 をしているのだという 概 念 的 抽 象 的 な 山 である その 山 から 独 立 して 松 の 木 の 本 本 が わりあいに 具 象 的 に 描 かれる 波 はというと 具 象 と 抽 象 との 混 合 物 である 水 面 の 揺 れや 波 紋 は 概 念 的 な 線 で 象 られているが 意 外 にほんとうの 波 のような 実 感 がある 波 頭 は 銀 泥 を 盛 り 上 げて 一 瞬 の 運 動 を 永 遠 にとどめるかのような 不 定 形 の 形 に 固 定 する さらに この 屏 風 では 自 然 描 写 をする 一 方 で 金 属 片 を 画 面 に 貼 り 付 けるという 手 法 を 用 いる 空 の 部 分 に 金 箔 を 貼 りつけて 太 陽 銀 箔 を 貼 りつけて 月 を 表 すほか 金 銀 の 切 箔 などを 散 らす 画 中 の 空 間 に 自 然 のイリュージョンを 作 ろうとする 絵 画 に 対 して それと 背 反 するような 表 現 を 用 いるのである 特 に 切 箔 を 散 らすのは 料 紙 の 装 飾 に 用 いられていた 技 法 だ そこに 書 を 書 き あるいは 絵 を 描 くための 下 地 作 りであって それ 自 体 が 空 の 表 現 に 使 2 この 像 に 関 する 研 究 は 数 多 いが 造 形 の 特 色 について 長 岡 龍 作 ほか 国 宝 と 歴 史 の 旅 神 護 寺 薬 師 如 来 像 の 世 界 朝 日 新 聞 社 1999 年 造 像 の 事 情 について 皿 井 舞 神 護 寺 薬 師 如 来 像 の 史 的 考 察 美 術 研 究 403 号 2011 年 だけを 挙 げておく われるのは 不 自 然 である 雲 や 霞 をほんとうらしく 表 わそうとするなら 絵 画 の 技 法 の 方 が 適 している そうではなくて さまざまな 形 と 大 きさに 切 られて 散 らばる 金 銀 の 箔 片 の 輝 きその 252 : 253

ものの 美 しさに 価 値 を 置 き この 風 景 の 描 写 の 中 に 共 存 することを 許 すのである 自 然 らしいものと そうでないものとが すぐに 隣 り 合 って 並 べられ あるいは 両 者 が 分 離 できないようなかたちで 提 示 されている そういう 造 形 のありように 違 和 感 を 覚 えさせない のが 日 本 美 術 のひとつの 特 徴 といえるだろう この 屏 風 も 自 然 描 写 の 理 屈 を 超 えたところで 不 思 議 な 生 命 感 に 満 ちた 実 に 魅 力 的 な 絵 画 になっている 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものの 共 存 尾 形 光 琳 1658 1716 の 紅 白 梅 図 図 9はそ の 典 型 である この 画 面 の 中 で 梅 は 相 対 的 に 自 然 らしい 姿 で 表 されている 紅 梅 と 白 梅 の 幹 や 太 い 枝 には 質 感 と 量 感 が 与 えられ 鋭 い 描 線 で 描 かれた 梅 の 花 の 蕊 に 至 るまで 自 然 の 姿 を 巧 みにとらえている それに 対 して 2 本 の 梅 の 間 を 流 れる 水 流 は 大 胆 に 意 匠 化 されて いる その 波 の 造 形 は 自 然 の 波 紋 に 基 づきながらもほとんど 完 全 な 模 様 になっている そ して これら 以 外 の 画 面 はすべて 金 箔 で 覆 い 尽 くされた さらに 抽 象 的 な 空 間 である 具 象 的 な 梅 樹 と 抽 象 的 な 水 流 そしてさらに 抽 象 的 な 金 地 とは 巧 みに 構 成 され 三 者 の 対 比 が 自 然 の 形 象 を 超 えた 複 雑 な 人 間 的 感 情 さえ 表 現 しているようである この 重 く 澱 んだ 水 の 形 は ただ 抽 象 的 なのではなくて 官 能 に 訴 える 妖 しい 力 を 潜 めていないだろうか 枕 屏 風 という17 世 紀 末 に 出 版 された 枕 絵 本 がある 3 そこには 屋 外 で 梅 の 咲 く 渓 流 の 近 くで 交 わる 男 女 を 描 く 図 が 含 まれる 図 10 その 渓 流 の 水 紋 は 紅 白 梅 図 の 水 流 と 非 常 に 近 いデザインで 表 されている 梅 とその 水 流 の 組 み 合 わせが 持 つエロティックな 意 味 を 光 琳 は 紅 白 梅 図 に 持 ち 込 んだと 私 は 想 像 している 老 成 した 白 梅 を 男 性 艶 麗 な 紅 梅 を 女 性 と 見 立 て その 間 を 流 れる 水 流 によって 両 者 の 交 わりを 暗 示 する そんな 構 成 になって いるのではないだろうか 紅 白 梅 図 は 津 軽 家 に 伝 来 した 屏 風 で 津 軽 家 の 婚 礼 調 度 として 制 作 されたと 推 測 されている 4 婚 礼 にふさわしいおめでたい 意 味 が 込 められているのだろ う グスタフ クリムト 1862 1918 が 日 本 のデザインに 関 心 を 抱 いたとき 彼 は 樹 木 に 由 来 する 渦 巻 文 が 何 かしら 官 能 的 な 意 味 を 持 つものと 理 解 して それを 抱 擁 する 男 女 の 背 後 に 配 したのだろうか 図 11 興 味 を 引 く 問 題 である 5 しかし 境 界 がないという 話 にも 分 量 には 3 枕 屏 風 は 寛 文 9 年 1699 刊 菱 川 師 宣 に 先 立 つ 逸 名 の 挿 絵 画 家 によって 描 かれたと 考 えられ る 枕 絵 本 の 傑 作 のひとつだが 稀 覯 本 である 私 は 原 本 を 見 たことがなく 図 10は 林 美 一 艶 本 研 究 師 宣 有 光 書 房 1968 年 88 頁 からの 複 写 である 4 河 野 元 昭 琳 派 響 きあう 美 思 文 閣 出 版 2015 年 429 430 頁 初 出 は 光 琳 と 津 軽 家 國 華 1251 号 2000 年 5 クリムトのジャポニスムについては 馬 渕 明 子 ジャポニスム ブリュッケ 1997 年 の 第 7 章 を 見 よ 限 度 がある 別 の 種 類 の 境 界 の 不 在 をふたつ 手 短 かに 指 摘 して 最 初 のトピックを 締 めくく らなければならない 日 本 美 術 においては しばしば 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものの 境 界 がない というこ とを 述 べてきた 19 世 紀 末 以 前 のヨーロッパや 中 国 の 美 術 は この 種 の 併 存 というのを 嫌 う か そもそもあり 得 ないと 思 っていたようだ それらは 本 来 まったく 異 質 のモードが 隣 接 して 存 在 する 造 形 のあり 方 を 許 容 しない 感 性 の 産 物 ではないだろうか それを 許 容 する 感 性 は 不 可 思 議 な 美 しさを 生 み 出 す 19 世 紀 後 半 の 陶 磁 器 で 宮 川 香 山 1842 1916 は 花 瓶 の 胴 のところに 桜 の 花 の 咲 く 枝 とそこに 止 まる 鳩 を 表 している 図 12 そ れは 実 際 浮 彫 などというレヴェルのものではなくて 立 体 として 造 形 された 鳩 と 桜 が 花 瓶 に 貼 り 付 けられているという 方 が 正 確 だろう 強 烈 な 違 和 感 があり 見 ていると 頭 がくらくらする ようなものだ 工 芸 と 彫 刻 との 境 界 が 侵 犯 されているのである イメージと 文 字 との 間 の 境 界 についてつけ 加 えておこう おおまかにいって 中 世 のヨー ロッパ 絵 画 ではたくさんの 文 字 が 書 き 込 まれていた しかし ルネサンス 以 降 文 字 は 絵 画 空 間 から 排 除 される 傾 向 が 強 まる イメージと 文 字 との 間 に 境 界 が 設 けられるのである 日 本 絵 画 では 文 字 の 侵 入 を 許 す 曖 昧 な 空 間 が 生 き 続 ける その 遺 産 は20 世 紀 の 画 家 にまで 受 け 継 がれた 佐 伯 祐 三 1898 1928 は パリの 建 物 やポスターに 記 された 文 字 を 絵 画 表 現 に 取 り 込 み 世 界 が 揺 れ 動 いている 感 じ 一 瞬 一 瞬 に 世 界 は 変 化 していて ポスターも 街 路 もそこを 通 り 過 ぎる 人 も 何 もかもすべては 移 ろい 行 くものだという 感 じを 作 り 出 している 図 13 二 画 面 の 枠 への 意 識 ふたつ 目 の 話 題 に 移 ろう 画 面 の 枠 の 問 題 である 19 世 紀 のジャポニスムが 画 面 の 枠 によってモチーフの 一 部 を 切 り 取 る 浮 世 絵 の 手 法 を 採 用 したことは よく 知 られている た とえば 歌 川 広 重 1797 1858 名 所 江 戸 百 景 はねたのわたし 弁 天 の 社 とアンリ トゥル ーズ=ロートレック 1864 1901 ジャルダン ド パリのジャヌ アヴリル との 類 似 が それ を 示 すだろう 伝 統 的 に ヨーロッパや 中 国 の 絵 画 は 画 面 の 枠 の 中 に 描 くべき 対 象 の 全 体 が 収 まるようにしていた 日 本 の 絵 画 は 時 折 画 面 の 枠 というものの 存 在 に 対 して 意 識 的 だ った そのことを 数 点 の 例 で 観 察 してみる 12 世 紀 の 絵 巻 信 貴 山 縁 起 は 3 巻 から 成 り 命 蓮 にまつわる 説 話 を 絵 画 化 してい る 第 巻 は いきなり 奇 蹟 の 場 面 から 始 まる 命 蓮 は 自 分 は 信 貴 山 にいながら 超 能 力 で 鉢 254 : 255

を 山 麓 の 長 者 の 屋 敷 に 飛 ばし お 布 施 を 受 けていた ところが 長 者 が 施 しを 怠 って 鉢 を 倉 に 入 れたままにしたため 鉢 は 倉 の 錠 前 を 破 って 転 がり 出 る 金 色 の 鉢 はそのまま 千 石 の 米 俵 が 入 った 校 倉 を 持 ち 上 げて 空 中 を 飛 び 信 貴 山 の 上 に 長 者 の 倉 を 運 び 去 ってしまう ここ で 倉 は その 下 の 方 の 部 分 しか 見 えない 上 の 方 は 画 面 の 外 側 に 出 てしまっている 画 面 の 枠 が 倉 を 切 り 取 ることで 倉 が 日 常 の 世 界 から 切 り 離 された 超 常 的 な 高 さにあることが 強 調 される 長 者 は 馬 に 乗 り 供 を 連 れて 倉 を 追 いかける 倉 はやはりそのほとんど 部 分 を 画 面 の 外 に 出 して 空 中 をゆらゆらと 飛 んで 行 く 絵 巻 の 形 式 の 源 流 は 中 国 にあるが 中 国 の 説 話 画 で 画 巻 の 形 式 に 描 かれたものに 同 様 の 表 現 を 見 せるものはない 中 国 の 画 巻 では できごと はすべて 画 面 の 枠 内 に 収 まるように 描 かれる 信 貴 山 にたどり 着 いた 長 者 は 倉 を 返 してほ しいと 命 蓮 に 懇 願 し 命 蓮 は 倉 を 残 して 中 の 米 俵 だけを 返 すという 鉢 に 米 俵 俵 だけを 乗 せると それに 続 いてほかの 米 俵 も 空 中 を 飛 び 始 める この 場 面 でも 何 十 俵 もの 米 俵 は その 上 の 方 が 画 面 の 上 端 で 切 り 取 られている 図 14 この 現 象 が 日 常 の 世 界 をはるかに 離 れた 高 さで 起 こっている 奇 蹟 だということを この 手 法 が 印 象 づけるのである 映 画 のカメラのように この 絵 巻 の 視 点 は 自 由 に 動 く そして フレ ームが 動 くことによって フレームの 中 にあるものと 外 にあるものとの 関 係 を 生 き 生 きと 変 化 させる 空 中 を 飛 び 渡 ってきた 米 俵 は 長 者 の 家 の 庭 に 次 々と 着 陸 する それは 家 の 女 たち のすぐ 近 くで 起 こっているできごとゆえにいっそう 彼 女 たちの 驚 きが 大 きいのだということ を 絵 巻 を 見 る 者 に 納 得 させるのである 絵 巻 は 左 へ 左 へとどこまでも 展 開 していくことの できる 画 面 で その 意 味 では 左 側 の 枠 というのはないといってもいい そういう 無 限 定 の 形 式 において 上 下 の 枠 を 意 識 した 描 写 をしているところに この 絵 巻 の 見 どころがある 画 面 の 枠 に 対 して 意 識 的 な 絵 画 は もちろん 中 国 においても 作 られていた たとえば 北 宋 の 枇 杷 猿 戯 図 図 15では 枇 杷 の 幹 が 画 面 左 の 枠 を 飛 び 出 してから 中 にもどり その 枝 がまた 画 面 上 の 枠 を 出 てもどる こういう 構 成 は 樹 木 の 大 きさを 表 すと 同 時 に 幹 と 枝 のあ しらいによって 画 面 に 興 味 深 い 幾 何 学 的 な 形 態 を 作 り 出 す 中 国 の 花 鳥 画 は こういう 枠 を 意 識 した 構 図 を 明 代 に 至 るまで 繰 り 返 し 15 世 紀 末 には 日 本 の 画 僧 雪 舟 1420 1506? がそ れを 採 用 することになる 四 季 花 鳥 図 京 都 国 立 博 物 館 の 屏 風 などで 雪 舟 は 画 面 の 枠 を 超 える 樹 木 というモチーフを 日 本 の 画 壇 に 持 ち 込 み 狩 野 派 がそれを 受 け 入 れて 襖 屏 風 のような 大 画 面 の 絵 画 を 多 数 制 作 したわけだが それはまた 別 の 話 題 である 明 らかに 枇 杷 猿 戯 図 の 画 家 は 信 貴 山 縁 起 より 世 紀 ほど 前 の 時 代 に 画 面 の 枠 の 効 果 に 意 識 的 だった しかし 同 時 代 の 画 巻 についてはそうはいえない すばらしい 都 市 図 である 清 明 上 河 図 北 京 故 宮 博 物 院 は 画 面 の 枠 で 切 り 取 られるモチーフを 描 く のは 稀 だし 私 の 知 る 限 り 唐 宋 の 説 話 図 の 画 巻 は 信 貴 山 縁 起 のように 画 中 の 空 間 が 画 面 の 枠 を 超 えて 広 がり そのことによって 鑑 賞 者 に 枠 を 意 識 させたりはしない 信 貴 山 縁 起 の 発 想 はどこから 来 たのだろう 私 には 答 がない 何 が 示 唆 を 得 られればと 思 う 別 の 例 を 挙 げよう 13 世 紀 の 秋 冬 山 水 図 図 16は 秋 では 右 上 から 左 下 冬 では 左 上 から 右 下 という 画 面 の 対 角 線 を 想 定 し 下 の 方 の 三 角 形 の 領 域 に 人 物 のいる 近 景 を 密 集 さ せ 上 の 方 の 三 角 形 の 領 域 にはあまり 物 が 描 かれない 空 間 として 遠 景 を 描 く 明 らかに 画 面 の 枠 が 画 面 内 部 の 空 間 構 成 に 影 響 している 日 本 絵 画 は 南 宋 絵 画 の 対 角 線 構 図 を 変 容 する 戸 田 禎 佑 教 授 は 17 世 紀 初 めの 俵 屋 宗 達 が 南 宋 絵 画 の 余 白 の 意 義 を 理 解 し 対 角 線 構 図 を 採 用 したと 早 くに 説 いていた 6 宗 達 は 画 面 がほぼ 正 方 形 になる 二 曲 屏 風 という 形 式 を 得 意 にした ふたつの 正 方 形 が 横 に 並 ぶ 二 曲 屏 風 一 双 という 形 式 は 画 面 の 枠 というの を 鑑 賞 者 に 強 く 意 識 させる 宗 達 が 風 神 雷 神 図 図 17を 描 いたころまでには 中 国 絵 画 の 対 角 線 構 図 は 日 本 絵 画 にもじゅうぶん 普 及 していたから 画 家 も 鑑 賞 者 もそれに 従 って 画 面 を 作 り 画 面 を 見 ることに 慣 れていただろう 右 隻 は 右 上 から 左 下 左 隻 は 左 上 から 右 下 それぞれ 対 角 線 によってふたつの 三 角 形 に 分 割 できる 画 面 で 近 くにいるのは 風 神 と 雷 神 であり 遠 くにあるのは 金 箔 の 貼 られた 空 だと 鑑 賞 者 は 画 面 を 読 む 近 くのものは 下 の 三 角 形 にあり 遠 くのものは 上 の 三 角 形 にある のだと 一 方 風 神 と 雷 神 は 上 の 隅 に 寄 っているので 右 隻 は 左 上 から 右 下 左 隻 は 右 上 から 左 下 という 反 対 側 の 対 角 線 で 画 面 をふたつの 三 角 形 に 分 割 することもできそうだ 風 神 雷 神 図 が 私 たちにもたらす 不 可 思 議 な 感 覚 は ひとつにはこの 構 成 に 由 来 する いずれの 場 合 でも ほんとうは 遠 く 天 空 の 高 みにいるはずの 風 神 と 雷 神 が 鑑 賞 者 に 近 い 位 置 にいる ことになってしまうのである 私 たちは 風 神 と 雷 神 のすぐそばにいて 彼 らとともに 空 中 に 浮 遊 しているように 感 じる 風 神 と 雷 神 が 乗 る 雲 の 下 には はるかな 天 空 が 広 がる それも 私 たちの 近 くから 想 像 上 の 私 たちの 足 下 から 遠 くへとずっと 空 が 続 いていることになる さら に 風 神 の 裳 と 雷 神 の 太 鼓 が 画 面 の 上 端 からはみ 出 すことで 空 はずっと 画 面 の 外 にまで 続 いていることが 示 される 画 面 の 枠 を 強 く 意 識 させる 形 式 であるからこそ その 枠 を 超 えるも のの 効 果 はいっそう 生 きる つまりこの 画 は 画 面 の 枠 が 空 間 構 成 を 規 制 する 対 角 線 構 図 を 踏 まえると 同 時 に その 構 図 の 変 奏 も 含 み さらに 枠 をはみ 出 すモチーフを 加 えて 枠 を 無 効 にしてみせるのである 宗 達 の 画 を 模 写 した 光 琳 は 宗 達 の 構 成 の 本 質 を 理 解 できなかった 尾 形 光 琳 風 神 雷 神 図 東 京 国 立 博 物 館 では 風 神 と 雷 神 は 画 面 の 枠 の 中 に 収 まり ただ 中 途 半 端 な 位 6 戸 田 禎 佑 日 本 美 術 の 見 方 角 川 書 店 1997 年 191 194 頁 256 : 257

置 にとどまっている 画 面 の 枠 が 切 り 取 るもの この 話 題 の 最 後 に 取 り 上 げるのは 喜 多 川 歌 麿 1753? 1806 の 美 人 画 である 7 歌 麿 は 美 人 の 上 半 身 を 拡 大 して 描 く 形 式 を 創 始 した 婦 人 相 学 十 躰 浮 気 の 相 東 京 国 立 博 物 館 などが その 早 い 例 である この 形 式 では 描 く 範 囲 が 限 定 される 分 顔 特 に 眼 と 手 の 造 作 が 特 に 重 要 になることを 知 っていた 浮 気 の 相 も 女 の 眼 と 手 は 実 に 生 き 生 きとした 表 情 としぐさを 写 し 出 す そして 歌 麿 は 眼 と 手 の 描 写 がいかに 重 要 かを 知 り 抜 いていたからこそ 逆 転 の 発 想 もした てっぽう というのは 吉 原 の 遊 女 の 中 でも 最 下 級 の 遊 女 だ 図 18 この 図 で 印 象 深 いの 形 と 山 水 の 景 観 との 相 互 作 用 がありそうである 画 面 の 枠 をはみ 出 すモチーフは ずっと 生 き 続 ける 葛 飾 北 斎 1760 1849 の 読 本 挿 絵 でもしばしば 効 果 を 発 揮 する 椿 説 弓 張 月 では 配 流 となった 崇 徳 院 が 天 狗 に 変 じて 空 高 く 飛 びあがっている 現 代 の 漫 画 においてもコマを 超 越 する 表 現 は 頻 出 するのだが 10 今 敏 1963 2010 オーパス 徳 間 書 店 2011 年 の 上 巻 162 頁 が 示 すのは そういうのと は 別 の 例 である ここではこの 漫 画 の 主 人 公 である 娘 が 原 稿 の 中 から 漫 画 家 のいる 現 実 に 抜 け 出 して 来 ているのだ 現 代 のピュグマリオンといっていい 物 語 である は 女 の 腕 が 画 面 の 枠 で 切 り 取 られていることだ 身 体 のうち 手 はその 人 の 世 界 に 対 する 働 きかけの 意 思 を 最 も 如 実 に 反 映 する 器 官 である 浮 気 の 相 のように 手 は 雄 弁 に 女 たち の 意 識 と 行 動 を 語 るのが 普 通 だ ところが てっぽう だけは 腕 が 描 かれない 彼 女 はまるで 両 腕 を 切 り 取 られた 者 のようにここに 置 かれ 乳 房 をむき 出 しにされている それによって 彼 女 の 無 力 が 彼 女 が 自 分 の 意 思 とは 無 関 係 に 肉 体 を 使 用 される 完 全 に 受 身 の 存 在 である ことが 強 調 されるのである 眼 の 描 写 にも 注 目 しよう 普 通 は 黒 目 には 濃 い 墨 を 用 いる 浮 気 の 相 でもそうであった てっぽう では 瞳 は 薄 い 墨 で 表 されている この 抑 えた 墨 の 調 子 が てっぽう の 虚 無 的 な 表 情 を 作 る 重 要 な 要 素 になっている 何 を 見 ているのかわからな い 何 も 見 ていないような 虚 ろな 眼 は この 灰 色 の 調 子 によって 作 られている こうして 半 身 像 における 強 力 な 表 現 手 段 である 眼 と 手 の 両 方 の 力 を 奪 い そう することによって 江 戸 の 売 春 社 会 の 最 下 層 に 生 きる 娼 婦 の 無 力 と 虚 無 感 を 暴 き 出 すという 驚 くべき 造 形 が てっぽう にはこめられている そのために 画 面 の 枠 は 効 果 的 に 活 用 されて いるのである 画 面 の 枠 についてもほかにおもしろい 問 題 は いろいろ 日 本 美 術 の 中 にある 雪 舟 が 15 世 紀 初 めに 天 橋 立 図 京 都 国 立 博 物 館 を 描 いたとき 最 初 は 少 し 小 さい 画 を 構 想 し 次 に 左 側 と 下 側 の 部 分 をつけ 加 えて 現 在 見 るような 画 に 変 更 したことが 指 摘 されている 8 この 場 合 枠 が 拡 大 しているわけである 枠 の 中 にもうひとつ 別 の 枠 がある 画 中 画 は ヨー 三 結 論 日 本 美 術 の 特 色 として 最 初 に 具 象 的 なものと 抽 象 的 なものとの 間 に 境 目 がないこと を 述 べた 次 に 画 面 の 枠 で 対 象 を 切 り 取 る 効 果 について 意 識 的 だと 述 べた つまり 内 側 には 境 目 がなく 外 側 には 枠 があるというわけである その 両 方 の 特 徴 を 兼 ね 備 えた 伊 藤 若 冲 1716 1800 の 絵 画 を 見 ながら 短 い 結 論 を 述 べよう 図 19 これらの 性 格 を 持 つ 美 術 が 志 向 するのは 何 かしらきれいに 整 えられた 平 面 あるいは 立 体 を 作 ることである それは 自 然 や 人 間 のほんとうの 姿 を 徹 底 的 に 再 現 しようとはしない 日 本 の 美 術 には 確 かに 現 代 人 をも 感 心 させる 写 実 性 があるが ほんとうらしさは いつ も 部 分 的 にとどまる 図 20 具 象 的 な 描 写 とは 異 なる 抽 象 的 なモードの 造 形 が 同 じ 空 間 を 占 め ていて まるでただひとつの 見 方 でこの 世 界 を 把 握 するのは 無 理 だと 告 げているようである そして 枠 の 中 に 切 り 取 られた 世 界 にだけ 関 心 を 集 中 し その 内 部 を 美 しく 仕 上 げる この 曖 昧 さと 洗 練 は ヨーロッパや 中 国 の 美 術 とは 違 う 日 本 美 術 の 派 生 的 な 性 格 に 由 来 する それ はつまり 偉 大 な 教 師 たちに 学 ぶ 生 徒 という 立 場 をずっと 免 れなかった そんな 文 化 の 産 物 で ある ただ 積 極 的 に 評 価 するならば この 矛 盾 した 要 素 を 共 存 させる 柔 軟 性 と 構 成 意 識 の 高 さこそが 日 本 美 術 の 魅 力 であり 現 代 の 造 形 を 作 り 出 す 力 にもなっているといえるだろう ロッパや 中 国 の 絵 画 とも 共 通 する 現 象 として 議 論 できるだろう 彦 根 屏 風 彦 根 城 博 物 館 は17 世 紀 初 めのダブル スクリーンの 例 である 9 19 世 紀 初 めには 浦 上 玉 堂 1745 1820 が 自 分 で 小 さな 枠 を 画 面 の 中 にいくつか 作 って その 中 に 山 水 を 描 いた やはり 枠 の 付 記 英 語 版 の 原 稿 Absence of Boundaries, Presence of Frames: Two or Three Things I Know About Japanese Art が 東 京 大 学 文 学 部 美 術 史 学 研 究 室 の 紀 要 美 術 史 論 叢 31 号 の100 177 頁 に 掲 載 されている もともとは2014 年 の6 月 10 日 に 東 京 国 立 博 物 館 で 行 なった 講 演 である エコ 7 以 下 の 議 論 について 佐 藤 康 宏 歌 麿 と 写 楽 至 文 堂 1996 年 40 42 頁 を 参 照 8 高 見 沢 明 雄 雪 舟 筆 天 橋 立 図 について 美 術 史 107 号 1979 年 3 4 頁 9 奥 平 俊 六 彦 根 屏 風 平 凡 社 1996 年 の 第 6 章 を 見 よ 10 漫 画 におけるコマを 逸 脱 する 表 現 については 四 方 田 犬 彦 クリティック 冬 樹 社 1991 年 188 195 頁 また 同 氏 漫 画 原 論 筑 摩 書 房 1994 年 42 48 頁 を 見 よ 258 : 259

ール ド プランタンというヨーロッパの 大 学 院 生 を 主 体 とした 集 まりで 日 本 美 術 について40 分 で 話 せ というのが 三 浦 篤 氏 の 要 請 だった ゴダールの 映 画 のタイトル 彼 女 について 私 が 知 っている 二 三 の 事 柄 を 副 題 に 借 りているのはそういう 聴 衆 を 意 識 した 事 情 だし 研 究 会 全 体 のテーマが 枠 組 み で あったので 後 半 はそれに 関 連 させた 内 容 になっている 同 じ 年 の9 月 に 若 干 増 補 したものを 台 湾 大 学 でも 話 し 紀 要 にはそちらの 原 稿 に 最 小 限 の 註 を 付 して 載 せた 最 初 の 講 演 と 紀 要 掲 載 の 際 英 語 で 書 いた 原 稿 の 校 訂 には 若 松 由 理 香 フィリップ ブルーム 御 夫 妻 にたいへんお 世 話 になった ここに 示 す のは 基 本 的 にはその 最 終 版 に 対 応 する 日 本 語 版 であるが 紀 要 で44 図 用 いた 挿 図 を20 図 に 限 定 した ので 挿 図 の 説 明 を 少 し 本 文 中 に 加 えた ABSTRACT Absence of Boundaries, Presence of Frames Two or Three Things I Know about Japanese Art Sato, Yasuhiro First I claim that the attraction of Japanese art is often to be found in the coe istence of the representational and the abstract in one continuous space The e amples are Deep bowl Kokubunji Tokyo Standing Yakushi Nyorai Jingoji Kyoto Landscapes with Sun and Moon Kongōji Osaka and Red and White Plum Trees MOA Museum of Art Shizuoka by Ogata Kōrin Before the 19th century European and Chinese art seems to have disliked the coe istence or ju taposition of the representational and the abstract Secondly I argue that Japanese art is very conscious of the effect of cropping an object with the pictorial frame The motifs breaking the frames have their greatest effect in Picture Scroll of the Legends of Shigisan Chōgosonshiji Nara Wind and Thunder Gods Kenninji Kyoto by Tawaraya Sōtatsu and Gun Prostitute Teppō by Kitagawa Utamaro To sum up there is no boundary inside of the artwork and at the same time it is framed on the outside Artworks possessing these characteristics generally intend to beautifully arrange planes or solids and never try to thoroughly represent real nature or human beings Japanese art possesses a sense of reality that captures the hearts even of us modern people but that sense of reality is always limited to some parts Abstraction a very different mode of depiction coe ists with the representational mode in the same pictorial space Japanese art concentrates its attention on the inner space within a frame and finishes it off beautifully Its ambiguity and refinement probably are a result of its derivative character which is alien to European or Chinese art But seeing these characteristics from another point 260 : 261

of view and appreciating them positively we might conclude that the fascination of Japanese art as well as its power in creating contemporary visual culture lies in this fle ibility and in this high consciousness of arrangement which permit the coe istence of contradictions 262 : 263